株式会社BEC CEO 日記

「Gozal」を運営する会社での日々

PKSHA Technologyを公開情報から分析してみる

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恥ずかしながら上場承認されるまで、会社名を知らなかったけど、たまたま昨日飲んでいた前職のボスから「すごいいい会社だよ」と教えてもらった。

そして公開情報を見てみると、特徴のある財務データだったのと、弊社が目指している少数精鋭で結果をだすという目標を体現されまくっている企業であることがわかった。

その成長のプロセスやデータをしっかりと吸収しとおくために、公開情報を眺めていく。

 

株式会社 PKSHA Technologyの歴史

創業1期目(2012年10月〜2013年9月末)

2012年の10月にAppReSearch(現 PKSHA Technology)は設立される。創業者は上野山 勝也さんと山田 尚史さん。両名ともに東京大学 松尾研究室出身とのこと。

1期目の2013年2月にアルゴリズムモジュール「予測モジュール」を開発している。

予測モジュール

金融機関での与信スコアの構築、ECサイトのユーザ購買予測といった、時系列情報に対して未来予測を行うモジュールです。

Products | PKSHA Technology Inc.

 

そして1期目の途中で本社を「東京大学産学連携プラザ」に移転している。

 

1期目の決算データは下記の通り。

売上高:1,000万円
経常利益:14万円
従業員:0名

おそらくファウンダーのお二人だけで1年目を過ごしていると思われる。デッドファイナンスをしているかどうかは不明だが、自己資本比率が約17%と低い。

 

2期目(2013年10月〜2014年9月末)

2年目にさらにアルゴリズムモジュールのサービスラインを拡充している。「強化学習モジュール」を2013年11月に、「推薦モジュール」2014年3月に開発。

 

強化学習モジュール

他モジュールの認識結果を利用し、さまざまな状況での最適な選択肢を自律的に探索・学習します。Logger との連携により広告クリック率を最適化する、Dialogue との連携によりコンバージョンを最大化する対話パターンを探索するなど、認識結果を自動でアクションに落とし込むことを可能にします。

Products | PKSHA Technology Inc.

推薦モジュール

ユーザの属性・嗜好性を解析し、レコメンデーションによる最適な情報出し分けを実現する機械学習モジュールです。複数のECサイト上での商品推薦、ウエブサイト上でのコンテンツ推薦等に用いられています。

Products | PKSHA Technology Inc.

 

 2014年2月に本社を「東京大学アントレプレナープラザ」に移転している。そして2014年8月に商号を現在のPKSHA Technologyに変更している。

 

2期目の決算データは下記の通り。

売上高:1億1,000万円
経常利益:4,900万円
従業員:3名

とても順調に2期目を終えて、売上・利益ともに大きく上昇。自己資本比率も約52%まで上昇している。ここまでエクイティを活用したファイナンスはない。

 

 

3期目(2014年10月〜2015年9月末)

3期目もアルゴリズムモジュールのサービスラインをさらに拡充。「異常検知モジュール」、「テキスト理解モジュール」、「画像/映像解析モジュール」を開発。

異常検知モジュール

本来は意図していない、異常な現象を検知するためのモジュールです。工場の検品処理の自動化・半自動化や、ウエブサイト上の不適切なコンテンツ検知等を行い、定型的業務にかかるコスト削減に貢献します。

テキスト理解モジュール

テキストデータの意味理解に特化したモジュールです。自然言語(特に日本語)の内容を理解し、分類・類型化を高速に行います。社内文書から特定文書を抽出する、煩雑なコールセンターログを分析・見える化する、といったユースケースに対応します。

画像/映像解析モジュール

深層学習を用いた画像・映像データの解析モジュールです。人物検出・識別、顔・表情検出、動作特徴解析、物体検出・識別、といった機能により、各種ソフトウエアとイメージングデバイスの知能化を担います。

 

3期目の決算データは下記の通り。

売上高:2億9,000万円
経常利益:1億4,900万円
従業員:8名

売上も倍以上成長し、経常利益率は約51%と非常に高水準を維持していることがわかる。また、この3期目から売上の大きな顧客の情報が公開されている。

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売上全体の18%を占めているのが東京電力ホールディングス株式会社で、5,300万円の売上を計上している。

またのちに同社の株主となる、株式会社NTTドコモに対しては売上全体の15.4%を占める4,500万円を計上している。

約1億円の売上をこの2社で計上していることがわかる。

創業3年目の会社が国内でも最大級に大きな企業に対してしっかりと売上をあげていることは重要な事実だと思う。その要因なども公開されてくると貴重な情報だと思う。

 

そしてこの3期目でも、エクイティファイナンスは行っていないので、資本金は創業期から変わりない。またこの3期目より財務活動によりキャッシュフローが公開されているが、金額に動きがないため、デッドファイナンスや返済は全く存在しないことがわかる。利益剰余金だけで事業を展開している。

 

4期目(2015年10月〜2016年9月末)

4期目が始まって最初の月に「対話モジュール」というアルゴリズムモジュールを新規に開発。

対話モジュール

自然言語での対話・応答の制御を司るモジュールです。最適な対話シナリオの選択を実現し、音声認識への拡張も可能です。すでにチャット上での自動対話において多数導入事例があり、ロボットとの自動対話にもご利用いただけます。

 

そして、この4期目で初めてアルゴリズムソフトウェアという新しいサービスラインを追加している。CRM領域のソフトウェア「CERROL」を2015年10月にリリース。

 

アルゴリズムモジュールとアルゴリズムソフトウェアの違いは一の部に丁寧に書いてくださっているので下記図や解説文章をご参照いただきたい。

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4期目の決算データは下記の通り。

売上高:4億6,000万円
経常利益:1億5,000万円
従業員:19名

現時点で公開されている最新の年度データ。経常利益率が32%と前期から大きく下がっている。とはいえ、非常に高いことに変わりはない。

 

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既存クライアントである株式会社ドコモに対する売上高がほぼ倍増して、約1億円となって全売上の20%のシェアとなる。

第2位として株式会社リクルートホールディングスへの売上高が5,200万円

第3位として株式会社電通への売上高が4,600万円

この3社で約2億円の売上があり、全体の40%の売上高を占めている。

 

 

なおビジネスモデル上の特徴でもあると思うが、広告宣伝費など販売費が非常に少ないのも特徴かと思われる。下記が販管費の内訳。

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ファイナンスに目を向けると、この4期目に初めてエクイティファイナンスを実行していることが公開されている。

割当先:NKリレーションズ株式会社(現 NKリレーションズ合同会社)
調達日:2016年5月13日
調達額:1億5,800万円
放出シェア:約5%
Post Value:約31億6,000万円

 

 

第5期3Qまで(2016年10月〜2017年6月末)

公開されている情報として一番最新のデータ。

まず2016年10月に新しいアルゴリズムソフトウェアとして「BEDORE」をリリースされている。


そしてリリース直後に会社分割により、この「BEDORE」事業を子会社に切り出している。

株式会社BEDORE(べドア)は、株式会社PKSHA Technologyの自然言語処理チームがスピンアウトして設立された企業です。最先端の人工知能研究を取り入れた独自の技術を用いて、AIによるカスタマーサービスの研究開発・提供を行っています。

BEDORE(ベドア) - AI(人工知能)を利用したカスタマーサービスソリューション

 

さらに手を緩めることなく新プロダクトをリリースしていることがわかる。

2016年12月に動画像認識領域のアルゴリズムソフトウェア「PKSHA Vertical Vision」をリリース。

PKSHA Vertical Vision

 

また2016年12月に本社を「本郷瀬川ビル」に移転している。
本社の家賃は約200万円/月と推測される。

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連結3Qデータは下記

売上高:7億円
経常利益:3億6,000万円
従業員数:30名

 

経常利益率が51%まで再度上昇している。

また本3Qまでにファイナンスも行っている。

割当先:株式会社NTTドコモ、伊藤忠商事株式会社
調達日:2016年10月31日
調達額:2億4,920万円
放出シェア:約1.6%
Post Value:約155億7,500万円

 

 

 

役員等の構成

会計ファーム、法律事務所出身者、外資系コンサル出身などガバナンス面で安心できそうなご経歴をお持ちな方が多い。また取締役の山田さんは弁理士を持つ方で、1989年生まれの平成生まれ。

上野山 勝也

代表取締役/ファウンダー

外資系大手コンサルティングファームの東京/ソウルオフィスにて BI 業務に従事。その後、大手ネット企業の米国シリコンバレーオフィス立上げに参画し、ウェブプロダクトの大規模ログ解析業務に従事。松尾研究室にて博士(機械学習)取得後、2013年、PKSHA Technology 創業。 松尾研究室 助教を経て、現在代表取締役。

山田 尚史

取締役/ファウンダー

東京大学在籍中は、松尾研究室に所属し機械学習技術を修める傍ら、率先してベンチャー企業に参画しソフトウェア開発に携わる。弁理士資格を有し、知的財産権への造詣も深い。2013年、PKSHA Technology を創業し、技術全般をリード。2017年、Forbes 30 UNDER 30 ASIA 2017: ENTERPRISE TECHNOLOGY に選出される。

吉岡 哲俊

取締役

監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人 トーマツ)にて、公認会計士として株式公開支援業務、法定監査業務に従事。その後、事業会社の財務戦略室に従事し、資金調達を行う等し、2015年10月に当社入社。2016年12月から当社取締役就任(現任)。

松尾 豊

技術顧問

1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002 年同大学院博士課程修了、博士(工学)。同年より、産業技術総合研究所情報技術研究部門勤務。2005年 10月よりスタンフォード大学客員研究員。2007年 10月 東京大学工学系研究科総合研究機構准教授。人工知能、特に高次 Web マイニングに興味がある。人工知能学会、情報処理学会、AAAI 各会会員。

松島 陽介

社外取締役

ATカーニーおよびマッキンゼーアンドカンパニーにて、戦略コンサルティング経験。MKSパートナーズおよび丸の内キャピタルにて、MA案件に多数従事。その後ノーリツ鋼機株式会社取締役副社長

水谷 健彦

社外取締役

2001年株式会社リンクアンドモチベーション入社。その後12年間に渡り事業成長を牽引。同社の中核事業であるコンサルティング/研修事業において主に首都圏の責任者を務める。同社取締役を経て、株式会社JAM 代表取締役社長

藤岡 大祐

監査役

新日本監査法人にて、主に株式公開を目指すクライアントへの短期調査、IPO支援業務、内部統制構築支援業務に従事。その後、㈱ヤマトキャピタルパートナーズに参画し、㈱YCP Accounting代表取締役に就任。2016年6月から当社監査役就任(現任)。

佐藤 裕介

非常勤監査役

ソフトウェア開発者。フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長。2010 年、フリークアウト、イグニスの創業に参画。両社にて取締役。2014年6月、7月、それぞれ東証マザーズに上場。 2013 年より、M.T.Burn 株式会社 代表取締役 CEO。起業前はグーグル日本法人にて広告製品を担当。

下村 将之

非常勤監査役

弁護士として、都内法律事務所に勤務した後、下村総合法律事務所を設立し所長就任(現任)。2016年6月から当社監査役就任(現任)

 

 

今後の展開をウォッチしたいスキーム

専門外なので、詳しくは分かっていないが、第7回 新株予約権発行時のスキームをもうちょっと研究したいと思った。

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この信託スキームによって、顧問契約・業務委託契約を締結しているメンバーに対してもインセンティブ設計を行っていくとのこと。

これからの時代の組織は小規模で、緩やかな結びつきを連ねる形も増えていくと想定される。そういった時代において、顧問・業務委託という契約の対象者に対するインセンティブ設計は重要だと思うので、本スキームの効果や内容を勉強していきたいと思った。

 

 

まとめ

PKSHA Technology社を見て特徴的な部分は、創業から間もない時期に、日本トップクラスのクライントをいくつも獲得して、大きな収益を獲得していること。

また主力事業の一つを会社分割により子会社化して運営するスキームを選択されているところも注目。

連結ベースで30人の少数精鋭で、直近3Qまでに3億6,000万円の経常利益、51%の経常利益率を創出している点が尋常じゃなくすごい。従業員一人当たり1,200万円の経常利益を創出する計算になる。

これ営業利益じゃなくて、経常利益の話であり、かつまだ3Qまでの途中経過であるということもすごい。

ちなみに下記からもその凄さはわかる。

上場企業で1人当たり営業利益が1000万円を超える企業は196社しかない。全体の6%程度と1割にも満たない。未上場会社にも目安となりそうで、1人当たり営業利益が1000万円超というのは、日本企業にとってはかなり高いハードルといえそうだ。

「1人当たり営業利益」トップ500社ランキング | 企業ランキング | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

今後も注目の企業であることは間違いない。