株式会社BEC CEO 日記

「Gozal」を運営する会社での日々

Wantedlyを公開情報から分析してみる

 

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ウォンテッドリー株式会社が2017年8月10日に、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場について承認された。

今後の当社の組織設計を考えていくためにも、ウォンテッドリーというチームを、いろいろな角度から分析して、成長を続ける企業のデータを把握しておきたい。

 

ウォンテッドリーの歴史

まずはどういう歴史を歩んでいる企業なのか見る。

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創業期

最初のスタート地点を見ると「フューエル株式会社」が2010年に設立されているのがわかる。今のウォンテッドリー社の前身となる会社。

Googleで検索すると下記のスライドシェアのページが出てきた。

フューエルは、Facebookマーケティングでブランドのソーシャル化促進をお手伝いする会社です。

Akiko(仲) Naka(暁子) presentations | SlideShare 

 

 一番最初は、創業者の仲 暁子さんがFacebook出身ということで、Facebookマーケティングのコンサルティングを行う事業から始まっている。

 

2期目

創業から1年後の2011年に商号を「ウォンテッド」に変更して、事業もピポットしている。そこから約半年後の2012年2月に「Wantedly」をリリース。

このリリースの直後2012年の4月に現CTOの川崎さんがチームにJOINされていて、さらに同6月に現執行役員のリードエンジニア相川さんがJOIN。開発体制を強化している。

 

「Wantedly」をリリースして半年後に決算を迎えた2012年8月期の決算データを見ると、年間売上高は約100万円。経常利益は-1,100万円。

 

3期目

そして翌年の2013年7月18日にサイバーエージェントから2億円を調達している。調達から1ヶ月後に決算日を迎えた2013年8月期は、売上3,400万円で経常利益は-400万円となっている。

 

この年の採用面では、2013年1月に現執行役員でエンジニア久保長さん、同年12月に現執行役員でBizdevの藤本さんがJOINされている。2014年には人事・コーポレートで大谷さんがJOIN。現体制を支えるチームがこの時からすで入社している。

 

4〜5期目

2015年6月にはオフィスを白金代5丁目に移転していて、このオフィスは現在も利用されていると思われ、おそらく下記記事の素晴らしいオフィスだと思われる。

この素敵なオフィスの賃料について下記の情報が公開されている。

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これだけいいオフィスだと、やはり高い。
月額賃料は約660万円とのこと。

 

そしてそのオフィス移転と時を同じくして2015年6月12日に、大きな資本業務提携を実現してる。これが日本経済新聞社との取り組みをスタート。日本経済新聞社と個人投資家3名から合計で約2億円の資金を調達している。

 

そんな2015年8月期の決算では売上高:4億5,000万円、経常利益:-250万円を記録している。この時従業員数は27名となっている。

 

6期目

そして2016年、この年はプロダクトをリリースしまくっていることがわかる。大きめのプロダクトを1,2,3,4月と各月に1つリリースしている。年明けから飛ばしている。

極め付けに11月には名刺管理アプリ「Wantedly People」をリリース。そしてシンガポールに子会社も設立してアジア進出のプロジェクトもスタートしている。

この2016年のチームでいうと、現執行役員の吉田さんがJOIN。その後2017年には海外開拓の担当として後藤さんがJOINされている。

売上高は8億4,000万円まで上昇し、経常利益1億2,000万円で黒字化達成している。

 

役員の構成

ガバナンスの部分については下記の機関設計を採用されている。

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役員は5名と以外と少ない印象を受ける。そのうち3名は監査等委員会に所属するため、業務執行取締役は2名だけ。その他に執行役員制度を設けている。

 

取締役メンバー

仲 暁子 / 代表取締役CEO

創業者、創業時からJOIN

京都大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。退職後、Facebook Japanに初期メンバーとして参画。2010年9月、現ウォンテッドリーを設立し、Facebookを活用したビジネスSNS『Wantedly』を開発。2012年2月にサービスを公式リリース。 

 

川崎 禎紀 / 取締役CTO
2012年よりJOIN

東京大学理学部情報科学科を卒業後、同大学院情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻の修士課程を修了。2006年にゴールドマン・サックス証券に入社、テクノロジー部門VPを経て、2012年4月にウォンテッドリーの開発・運営にCTOとして参画。2013年10月より現職。

 

高原 明子 / 社外取締役(監査等委員)
2015年11月に就任

三菱商事株式会社での株式会社ビジネス・コープ(現 株式会社ベネフィット・ワン)立ち上げをはじめ、日本のインターネット黎明期からネットを活用した様々な事業のスタートアップに携わり、主にサービス企画・業務設計、資金調達などを担当。その他、証券アナリストや経営企画・内部監査を含む幅広い分野の経験を活かして、2014年4月、当社常勤監査役就任。2015年11月、当社社外取締役(監査等委員)就任。

 

成松 淳 / 社外取締役(監査等委員)
2015年11月に就任

ミューゼオ株式会社代表取締役社長。監査法人トーマツを経て東京証券取引所上場部に出向、上場規則等の整備や上場規則上の措置適用等に従事。2007年よりクックパッド株式会社執行役CFOとして管理体制の構築、東証マザーズ上場等を主導し、2012年3月に独立のため退任。現在はネットサービスの運営に注力するほか、エンジェル投資や社外役員としての立場からベンチャー支援にも携わる。2015年11月、当社社外取締役(監査等委員)就任。

 

吉羽 真一郎 / 社外取締役(監査等委員)
2015年11月に就任

潮見坂綜合法律事務所パートナー。2000年に第二東京弁護士会にて弁護士登録の後、2009年より森・濱田松本法律事務所パートナーを務める。2011年10月、株式会社enish社外監査役就任。2015年1月、潮見坂綜合法律事務所入所。同年11月、当社社外取締役(監査等委員)就任。

 

以上が取締役の構成。ターニングポイントは2年前の2015年11月に3名の監査委員を社外役員として迎え入れ、上場を目指したガバナンス体制を強化したところ。

 

執行役員メンバー

続いて執行役員を見てみる。

 

吉田 祐輔 / 執行役員 経営企画担当
2016年6月にJOIN

京都大学工学部を卒業後、モルガン・スタンレー証券に入社し株式アナリストとして勤務。PRエージェンシーのフライシュマン・ヒラード・ジャパン、旅行系スタートアップのトリッピースを経て、2016年6月にウォンテッドリーに入社。2017年5月より現職。

 

藤本 遼平 / 執行役員 ビジネスチーム担当
2013年12月にJOIN

神戸大学経営学部を卒業後、2010年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社。経営企画本部を経て、ショッピング事業部にて営業・企画・マーケティングに従事。2013年12月にウォンテッドリーに入社しビジネスディベロップメントを担当。2014年9月より現職。

 

久保長 礼 / 執行役員 開発チーム担当
2013年1月にJOIN

京都大学理学部数学科を卒業後、複数のスタートアップの立ち上げや開発・事業運営に携わる。2012年6月よりウォンテッドリーのサービス開発に関わり、2013年1月に正式入社。Wantedly Visitなど複数のサービス、アプリの開発・グロースを主導。2014年9月より現職。

 

大谷 昌継 / 執行役員 コーポレートチーム担当
2014年8月にJOIN

東京大学経済学部を卒業後、ソフトバンク株式会社を経て、2001年にオイシックス株式会社に入社。物流部長を務めた後、2005年より人事を担当。2014年8月にウォンテッドリーに入社し、人事をはじめとするコーポレート業務に従事。2016年6月より現職。

 

後藤 剛一 / 執行役員 海外事業統括担当
2017年4月にJOIN

東京大学教養学部卒業後、2008年にGoogle日本法人入社。2011年にTwitter日本法人にて広告事業立ち上げを経て、国内大手顧客向け営業チームマネージャー、日本・韓国市場向け経営企画部マネージャーを務める。2017年4月ウォンテッドリーに入社、同年5月より現職。

 

相川 直視 / リードエンジニア
2012年6月にJOIN

早稲田大学基幹理工学部情報理工学科を卒業後、Googleに入社し、検索システムの開発に従事。2012年6月にウォンテッドリーに入社。アルゴリズム、決済システム、インフラ基盤などバックエンド中心に開発。2016年8月よりWantedly Peopleの開発を主導。

 

 

財務データの分析

現在走っている2017年8月期の3Qまでのデータが公開されている。まずは四半期データを見て特徴を探す。

 

BS(直近四半期-2017年8月期3Q)

敷金

やっぱりオフィスがめっちゃいいだけあって、敷金は大きく計上されている。
敷金は約1億5,000万円が計上。

 前受金

あと特徴的なのは、ビジネスモデルから考えて当然ではあるが前受金が約1億7,000万円計上されていること。課金した企業が年間一括払いを行うことでこの部分は増えていくはず。

 固定負債

また固定負債が存在しないということで、実質的に大きなデットファイナンスを行っていないし、売上の前受金が1年を超える期間分では存在しないということもわかる。

自己株

最後に自己株式は一部を償却して、上場時に残りの一部を公募することも明らかになっている。

 

この自己株式を取得にいたった経緯については下記の内容から推測できる。

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2016年4月27日に現ウォンテッドリー社の共同創業者の萩原さんから、会社に対して株式が譲渡されている。価格は約5,000万円。そして萩原さんは2016年2月26日に取締役を退任されている。

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BS(直近年度の財務データ)

次により詳細な情報を見えていくために、公開された2016年8月期の年度財務データを見ていく。

売掛金

まずは売掛金の計上先について。

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もっとも売掛金が発生しているのはウェブペイだが、これは決済システムを提供している会社なので、クレジットカード決済による売掛金は会計上すべてここに入ってきていると推測される。

つまり実際にウェブペイにWantedlyのサービスを提供しているわけではないと思われる。

それを除けば、最大の取引相手は株主でもあるサイバーエージェントの約350万円となっているので、少数の取引相手に依存している傾向も薄いと言える。

なおよく誤解されるので説明しておくと、「売掛金」とはわかりやすく言うと請求書を投げたけど、支払期日までにまだ時間がある場合などで、未回収となっている金額のことである。つまりもうサービスは提供済みで、もうすぐ回収できるだろうという金額のこと。

 

敷金

次に敷金の相手。

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オリックス不動産投資法人が全額分。最近よく見る気がする。

良い不動産を抑えているということだろう。

 

 

未払金

次に負債。

未払金を見ることで、ウォンテッドリーが何にいくらくらい投資をしているのか見えてくるだろう。

 

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まず、 ランドスケイプに対して、約1,200万円の負債がある。推測だが月額でこの金額の報酬を支払っていると思われる。ハイクオリティな顧客データ統合ツールを使っているということか。


次はFacebookに対して350万円の負債。これはおそらくFacebook広告だと思う。

オフィスバスターズはオフィス設備のコストだろう。期越えのタイミングで未払を認識しただけだと思う。

朝日インタラクティブにも210万円の負債。これはどんなサービスを提供してもらっているのかよくわからないが、顧客獲得・リード創出関係のものだと思われる。

最後にAWSで、136万円の負債。これも月額でこれくらい発生していることが推測されるので、同種のベンチャーにとっては事業計画を引く時にほんのちょっとだけ参考になるかもしれない。

 

前受金

続いて前受金を見ていく。

ここで得意先が見えてくる。売掛金と前受金は意味が異なるので、それを説明すると、前受金は、まだサービスを提供していないけれども、受け取っている金額のこと。注意していただきたい。

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多様な企業に分散していることがわかるので、やはりWantedlyの収益源は特定の企業に依存しているわけではないということがわかる。

2016年8月末日時点で前受金は1億1,000万円あることがわかる。

 

PL(直前四半期-2017年8月期3Q)

3Qまでの数値で売上を意味する営業収益は9億1,000万円。単純計算すると、今年度は通年で約12億円に達する。

 

PL(直近年度の財務データ)

より詳細な情報を見ていくために、2016年度の年間データを見ていく。

 

販売費及び一般管理費を見る。

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人件費は1億9,000万円、広告宣伝費は1億5,000万円で、この年の売上高が8億4,000万円となっている。
 
 

まとめ

いろいろな定量的なデータを見て思ったのは、無駄がないということ。エクイティファイナンスも必要最低限で進めていて、デッドファイナンスは行っていない。資金調達活動に時間が取られないというのは重要だと思うので、効率的に会社の資金繰りを回されていることがよくわかる。

あとは従業員数が40人前後で1億2,000万円の営業利益を創出しており、だいたい一人当たり300万円の営業利益を生み出している計算になる。

取締役をいたずらに増やさず、執行役員制度を活用していくスタイルも最近ではスタートアップでもよく採用される仕組みだろう。